水道検針日記(199X年11月11日)~(増量)聴取したら組関係と思しき男

今日の現場はまたB町とK町。合計406件。B町での検針を恙無く終え(ちょうど12時だった)、K町前のおにぎり屋でおにぎり2個といなり寿司2個(合計300円)を買い、休憩を取るために友人が住むシェアハウスへ。

友人Pが熟睡していた。この男は僕が1時過ぎにシェアハウスを後にした時点でも気持ち良さそうに寝ていた。それなりの年になってこれほどゆったり暮らしている男は非常に少ない。ちょっと羨ましい。

今日の2冊目の現場はK町駅のすぐ近くで、マンションが多い。マンションの10階からビル群がよく見える。マンションは公団住宅風の地味なものもあれば、オートロック式も、または出入り自由で管理人が常駐しているものもある。

特にオートロック式のマンションの中で、僕がいるのを見ると緊張する人が多い。家の近くに見知らぬ男がいるのは恐いものだが、検針している僕の方も、ここに誰が住んでいるかわらないので、ある程度の心構えはしている。

ある部屋で水量が前回の倍に増えているところがあったので、「何か変わったことありました?」と聴取したら、出てきたのは組関係と思しき若い男で、気軽にインタホンを押したことをちょっと後悔。ヤクザ関係なんて部屋を外から見ただけではぜんぜんわからない。でも優しい感じの奴だった。抗争中にヒットマンと間違われたりしたら恐いなあ。

最後は建物一つで70件くらいあるマンション。ここは家族が多い。総括メーターを見るために管理人にカギを借りる。ここの管理人は、いつもジャケットを着た50過ぎのシベリアに住むアジア系ロシア人みたいな感じの人で頭頂部の半径5cmほどがはげている。

この人は、毎回僕がカギを借りたり、新しく入居した人の氏名をきいた時でも割かし無愛想だったのだが、なぜか今日は機嫌がいい。「まったくカギ、カギ、カギでいやになっちゃうよ。屋上には3つもかけてるんだよ。それでも巡回しろってんだから」と言って笑っていた。この人が笑うのを初めて見た。

この人は空いた部屋の掃除、補修などもやるみたい。でも日中はそんなにやることもないみたいで、昼からよく友達みたいなオヤジと囲碁だか将棋だかをやっている模様。もしかしたら全然違うかもしれないけど。こういう仕事でどの位お金がもらえるのかなぁ。管理人の仕事って楽しいのだろうか。

このマンションの前でどこかで会ったというか、検針する時にいつも必ず会っているおばさんを見た。でも彼女がどこの人なのかどうしても思い出せない。こういうことがよくある。