水道検針日記(199Y年5月14日)~幼稚園児たち

今日の現場はB町とK町。合計350件くらい。B町を検針してたら、メーターを

見ている家から、どこかで見たことがあるおじさんが出てきた。それでハンディでその家の家主の名前を確かめたら某文筆家だった。僕は彼の著作は一冊も読んだことはないが、テレビなどで彼の風貌はよく知っている。意外と背が高い。彼の家はけっこう大きい。

某文筆家の近所には、幼稚園が道を挟んで2軒ほどある。そのうちの私立幼稚園の方のメーターは園児たちが遊んでいる運動場にあるので、先生の軽く声をかけながら敷地の隅の方に行ってメーターの蓋を開けると、子供たちが素早くいつも4,5人集まってくる。

「なにやってるのー?」と彼・彼女らはきいてくるので、これは水道のメーターというもので、(検針棒で指しながら)ここに書いてある数字をみて、この機械に(ハンディ)打ち込むと、料金が書かれた紙が出てくるんだよ、とちゃんと説明してあげる。

でも園児たちにはまだ水道はわかっても、メーターというものの機能や役割というものがまだ理解できないので、どうしてもメーターの蓋の裏についた蜘蛛の巣やメーターの形や数字などの方にばかり目がいってしまう。

それにしても子供というのは、ほんとーに好奇心が強い。世界はすべて驚きと未知であふれ、毎日が発見の連続なんだろうな。それにしても、私立幼稚園に比べて区立幼稚園のこどもたちは、いまひとつ元気がないような印象を受ける。

私立の方のこどもは、いかにも子供らしく、歓声をあげたり、走りまわったりして元気なんだけど、区立の方にいる子供たちは、(ほんのちょっとの間に見ただけの勝手な印象なのだが)あまり元気がない。

よく考えてみたら、検針していて、これほど熱い関心を人から向けられる場所があったろうか? そのせいというわけでもないけれど、僕はこの幼稚園のメーターを見るのが好きだ。

その後、K町の商店街の一部を検針。汚くて少し異臭漂う米屋のメーターを見たら「へー、今はそんな機械で検針するんですか」と店主にきかれた。ここの店は二人で経営しているみたいだが、二人ともどことなく偏屈なじじいだ。決して嫌いな人たちではないんだけど。

それで僕は、これは小型のコンピューターなんですよ、と言った。老人は「へー」と驚いていたが、あまりよく理解していないみたいだった。まあ、「コンピューターなんですよ」といわれただけでは、多分僕もよくわからない。

要するに、このハンディというのは、メーターの指針を打ち込むと、前回指針から引き算をして、今回分の使用量を算出→そして、それを基に料金をだし、プリンターから「おしらせ」を出す。

極単純にいうと、こうなる。もちろん、機能はこれだけではなくて、一軒一軒の家の過去データも入ってるし、いつもより4割以上の増減がある場合はピーと音を鳴らして、もう一回指針をよく見て確認してね、というサインを送ってくれる。

ところで、今月はやけに「増」が多いなと思っていたら、原因がわかった。ゴールデンウィークがあったのと、2月が28日しかなかったせいで、前回の件新までの日数が58日間くらいだったのに対し、今回は64日くらいとかなり多いのだ。

明日は460軒と全検針日程の中で最も件数が多い日だ。これを乗り越えれば今月の山を越える。がんばろう。