水道検針日記(199Y年6月8日)~アイルランドから帰国

ちょっと久しぶり。実は5月25日から6月6日まで旅行に行ってきた。行先は主にアイルランド。最初と最後にロンドンにも一泊ずつした。本当はね、ホームページでもしばらく留守にするんで更新がないことを告知した方がいいんだけど、なんとなくひっそり行ってひっそり帰ってきたかった。

なんでかな。旅行に出ると決めたのが、出発の4,5日前のことで非常に急だった。まわりの友人にも旅行のことはあまり言ってない。忙しいあまり、アイルランドの熱心な検針日記読者の皆さんに連絡するのを忘れてしまった。

「こちらにお越しの際には是非うちへいらしてください」というたくさんの暖かい申し出があったにもかかわらず、ずっと6人部屋のホステルばかりに泊まっていた。

なんでアイルランドなのかというと、まあ戴した理由は何もなくて、ここ3年くらい外国に行ってないから久しぶりに行きたいなと考えていたのが、他に強力な候補がなくてたまたまそこになった。

でももちろん何かしらのきっかけがないわけではなくて、藤原信也が初めて書いた小説「ディングルの入江」を読み、また同時に発売されたアイルランドの写真集「風のフリュート」を見て、そこに行ってみたいくなったんですね。

外国に旅に行きたいのだが、しかし、どこに行っていいのかわらない、特に行きたいところもない、という状態が長く続いていたので、重い腰を引っ張り上げてくれるものが必要だったんですね。

だからその理由は何でもいいといえば、何でもよかった。わずか2週間弱のことだし、場所も無難なヨーロッパということもあって、平穏無事で大したことは何もなかったですけどね。近いうちに(多分)今回の旅行のことを文章に書くと思います。

しかし、それにしても日本は金持ちだよね。どこに行こうかなと地図帳を見ながら思案していて、それで行けないところはほとんどないんだから。アメリカ、アジア全土、ヨーロッパなどなどいろいろ考えちゃったもの。

世界には自分の国からすら出ることができない人もいるのに、というより、むしろ人口としてはそちらの方が多いんだよね。世界に現在(確か)52億人いるとして、そのうち僕みたいな庶民が世界地図見ながら「どこ行こうかな~」なんて考えることができるには、北米や東アジア(中国は含まない)、ヨーロッパの9億人くらいに過ぎない。しかし、世界52億の人々が好きにジェット機に乗ってどこにでも行くような事態というのも環境面で大いに問題があるのだが。

成田からアパートに帰ってきたのが土曜日の夜の12時。イギリスは、その時間は昼の4時で、僕は飛行機に中でほとんど眠れなかったので、当然時差ボケが残っている。

それで夜中の2時頃に眠って、最終的に目がさめたのは翌日の昼の4時。起きたら疲れもとれていて、よかったんだけど、そのかわり夜中に眠れない。体内時計がまだヨーロッパ時間になっているのだ。

それで結局一睡もしないまま、仕事へ。いつもは早くても9時半出社が今日は8時半。休みをとるということは、僕の担当の分を誰かが検針するということで、それを考えるとどううも緊張する。

単なる誤針なら問題ないのだが、なぜかそれ以外のヤバイことがバレているんじゃないか、……という漠とした不安に襲われる。じゃあ、そのヤバイことって何だと聞かれると、まぁ、あれなんですけど。

「ねえ、君、これおかしいよね。どういうこと? 説明できる?」という主任の詰問の声をどうしても想像してしまう。帰国の日が迫ったアイルランドのダブリンでそんなことを想うと、なんだか悲しくなるね。

大半の社員の出勤時刻は9時で検針員が来るのはみんなバラバラだから朝はあまり人にはあわず、所長から「じゃ、今日からまたお願いしますね」と言われただけだった。

睡眠時間が足りないと太陽の光が眩しい。検針しながら途中でちょっと頭がぼーっとしてくることもあったものの、再調がないせいもあって、全370件を終えて会社に戻ってきたのは午後2時半。けっこういいペースだ。

会社には事務の人とあと数人しかいなくて「へー、旅行行ってきたんだって?」などと声をかけてくる人もいない。検針員同士は関係が薄いのと、仕事の大半が現場なので人間関係が希薄なんだな。

今週は水曜に中休みがあるかなと思ったら、先週にあったので、中休みは今週にはなかった。まあ、その分検針する数が増えるから給料も上がるからいいか。それにしても、今日は気温が20度ちょっとで湿度も高くなかったから爽やかな日和だった。

 

ところで、成田から電車に乗ってたら途中で二十歳くらいで茶金髪、日焼けサロン的黒さの女の子が二人乗ってきて、二人とも本当によく似た格好をしてるから友達かなと思ったら二人とも全然違う席に座ったのでどうやら関係がないらしかった。

それで僕もヒマだし、目の前に座っているものだからそのうちの一人をなんとなく見たんだけど、ほとんど一時たりともじっとしていない。

携帯で友達に電話かけたり(「ね~、今どこいるの? あたし? あたしは今電車の中、千葉に向かってるとこ。今日どうするう?」)、まつげを整えたり、脂取り紙で鼻の脂を取ったり、口紅を塗ったり、ふくらはぎを揉んだりと非常に忙しい。もう一人の茶金髪の女の子方も似たようなものである。

髪や化粧、服装にかける彼女たちのエネルギーは相当なものだ。僕は見ながら思ったんだけど、これだけの労力を何か他にもっと建設的なことに傾けることができないものだろうか。彼女たちを100人も集めたらローマの都だって1ヵ月もあったらできちゃいそうだ。

考えてみたら何か一つのことにすごい量のエネルギーを傾ける人はたくさんいる。サッカーやったり左翼組織に入ったり、宗教活動やったり、パソコンにのめりこんだり、ボランティアやったり。何が建設的か建設的でないかは人によって違うとはいえ、方向性を間違うとオウムみたいになったり、単なる消費に躍らされるだけの存在になってしまう。

しかしダイオキシン原発、公共事業による自然破壊など深刻なことは多いなぁ。