水道検針日記(199Y年11月12日)~保育園児

この頃、ちゃんと寒くなって空気も冷たくなってきた。気づけばもう12月もすぐそこだ。朝晩は冷えるものの、日中はまだけっこう暖かくて検針をするにはちょうどいい。

でも、時には風が吹く日もあって、そういうときは鼻水がじゅるじゅるとしがちだ。それで、知らない間にすっかり手鼻がうまくなっていたりしてね(笑)。

今週は月曜の240件を除いてずっと360件以上が続いて、明日は山場の460件が控えていて、しかも中休みがないので一番キツイ。来週も中休みはなく、5日間連続勤務だが、件数ががくっと減るので随分楽になるだろう。

今日の現場はB町とK町。合計360件。

初めにB町。ここには某著名人と大きな旧農家の屋敷と幼稚園がある。庭が広い家が多くて、比較的に好きな所だ。旧農家の屋敷には植木屋が4人も来て作業をしていた。

大きな樹木が多いからクレーンを使っていた。屋敷の近くに2軒幼稚園があって、そのうち私立幼稚園のメーターが運動場の片隅にあるので、毎回、先生に声を掛けて、園児が遊んでいるのを横目に見ながら検針をする。

今日、メーターを開けたらメーターボックスの中が土でいっぱいになっていた。蟻が中に巣を作っていたのだ。それで僕が検針棒を使って中の土をかき出していたら、子供たちが4,5人だーっと駈け寄ってきて「ねー、なにやってるのお?」と円になってメーターの周りを囲んだ。

それから土をちゃんとかき出すだめに園児からシャベルを借りて掘ろうとすると、一人の元気のいい男の子が「ボクがやるー」とせっせと働いてくれた。それで、ようやくメーターが発見されたら数字を読ませて、その数字をハンディに打ち込んで「こうやって水道の料金を計算するんだ」と一応説明したけど、まだあんまりよく理解できないみたいだった。

のんびり子供に掘ってもらったりして結局5分ほどいただろうか。その間、保母さんは何事かと心配になって様子を見に来ることもなかった。子供への学習効果をちゃんと考えているのだろうか。事なかれ主義で管理が厳しいところだと、部外者と園児の交流を妨げるところだってありそうなのに、なかなか感心である。

それで今日は4,5才の子供たちと交流したわけだが、その時気づいたのは、園児の服装が物凄くコギレイで、スタイルがびしっと決まっている子が多いことである。お古とか染みをつけた服を着ている子は一人もいないみたいだった。ミキハウスが子供向けのブランド服を売り出していて着実に売れている、という記事をどこかで読んだ覚えはあるが、実際にその状況を実感したのは初めてである。

子供が着る服だからといって舐めてはいけなくて、上下そろえて2,3万円もするのはザラだということだった。言うまでもなく、幼稚園の子供に服の趣味だとかブランド意識なんかほとんどあるわけもなく、全て親の考えや趣味で着せているわけだけど、皆さんはこのような傾向をどう思いますか?

もちろん経済的に余裕がある家庭が、自分がブランド物が好きだから子供にも……というようなケースは昔からあった筈だ。しかし、現在の状況の特徴は、それがそれほど「いいとこの子」でなもない子供にまでも裾野が広がっている点にある。

中には「子供の服にこんなに金をかけるなんてアホらしいけど……」と思いながらも、周りがキレイな格好をしていると、圧力に負けて実家の親に泣き付いたりしてでも買っちゃう親もいるんだろう。「だって章太郎が幼稚園でいじめられたら可哀相じゃないの」とか。でもやっぱりね、これ見よがしに高そうな服を着せるのは趣味が悪いし、そもそも子供のためにそんな金をかけるのは相当に馬鹿げているよね。

周りはどうあれ、必要のない物は必要がないんだと親がしっかり思想を固めないと。それはそれでキツいことは多いだろうけどなぁ。

B町の検針が12時過ぎに終了。休憩を入れて12時40分くらいからK町の商店街の一部とその周辺の住宅街を検針。以前にも書いたことがあるけど、ある商店と商店の間の道路から5mほど入った所にメーターがあって、しかもそのメーターの手前にパイプが通っている。

そのため僕は、商店のトタン壁とパイプのわずかな隙を胸を圧迫されながら通ることになる。

それで今日、商店のばあさんが出てきて「これでうちの壁が壊れたらどうしてくれるの」と僕に文句を言った。僕としても胸が圧迫されるのが好きなわけでもないので、どうしたらメーターをもっと道路側に移動できるかちょっと話をした。

ばあさんが言うには、水道局になんとかしてくれと頼んだところ「あなたは、すでにそのメーターの移動を求めないことに同意の判子を押しています」ということで相手にされないのだが、しかしそれは、そのばあさんの店の隣にまだ何もなかった時代のことで、40cm隣に店ができた今日では事情が違う、何回水道局に頼んでも「検討しておきます」と言うだけで逃げられてしまいどうにもならない、かといってパイプを使っている店の地主は恐い人で、メーター移動の話をすると(移動費用をかけたくないので)「お前らのとこに火をつけるぞっ」と脅しをかけてくるんだそうだ。あれだけ入り組んでゴミゴミした地域では、こういうこともあるんだよね。

検針を3時に終了させて、それから昨日やった所の再調査を終えてちょうど4時半帰社。疲れた。同僚の南田君(仮名)は会社で大きなシュークリームを一人でうまそうに食べていた。今日は仕事をしながらどうしてもシュークリームを食べたくなったんだそうだ。