水道検針日記(199Z年2月1日)~管理人もつらいよ

1月末の29~31日の3日間、風邪をひいて寝込んでしまった。29(金)の朝に起きた時に、なんとなく背中がぞくぞくするなあ、と思ったら午後になると、体がだるくて気持ち悪くて歩くのがつらくなった。それで結局せっかくの月末の休みを闘病に費やしてしまった。

しかし、僕は年に一回ぐらい風邪をひくんだけど、たまに病気になると健康のありがたさが身に沁みてわかるね。病気ってこんなに苦しかったんだって思い出した。僕は小学校の頃、小児ぜんそくを患っていて、しょっちゅう学校を休んでいた。一度、ぜんそくになると何しろ呼吸がうまくできなくて、横に寝ることができず、かといって座った姿勢では眠ることができなくて、二日間で4,5時間しか眠ることができないことがよくあった。

ほとんど一晩中、家族が皆寝静まった後、息をゼーゼーいわせながら、暗い中、一人で冷蔵庫のサーモスタットがうなる音を聞いているしかなかった。でも、大人になって呼吸気管が太く成長したおかげで喘息も治り、風邪をひいてもとりあえずふとんに横になって寝ることができるようになった。それだけでもラッキーだ。

薬局で市販の風邪クスリを買って飲んだせいで、体調がかなり戻って、日曜の夜には、体がかなり動くようになった。今朝、起きたとき、まだちょっと気持ちが悪くて背中の悪寒が強力に残っていたので、今日は休もうかと思ったけど、できるだけ給料を減らしたくないのと、今日の冊は楽勝のところなので、会社に行った。

その前に朝食を食べた。食欲は全くなかったが、何か食べないと仕事はできないので、ごはんを無理矢理に半合ほど食べた。でも全然味がしないんだなぁ。

 

今日の現場はK町が二冊。合計280件。冊はとなり合っているので移動の手間がない。調子が悪いといっても、検針しているうちに段々体がほぐれてきて、風邪も抜けるのでは、と思っていたものの、あんまりそういうこともなくて、時々、背中にゾクゾクゾク~~という強い悪寒が走った。

悪寒というのは大した症状ではないので、いつもより2割ぐらい動きが遅くなるだけで、検針していて特別に疲れるとか、息が切れるとか、喉が痛いとか、気持ち悪くて吐きそうになるようなことはない。でも小さいながら恒常的にしんどくて、だるいんだよね。

結局、3時頃までには全部終了。一冊目の30件目辺りで、オートロックのマンションがあって、ここは以前まで管理人が必ずいたのだが、どういうわけか不在だった。管理人室の机の上とか流しなんかを見ると、それ以前まで居た気配はあるものの、1時間後に再び来てもいない。

ここは社会人の独身者用マンションか何からしく、日中は人の出入りがなく、誰も開けてくれる人がいない。20件近く翌日に持ち越すわけにもいかないし、仕方ないので、管理会社に電話して暗証番号を教えてもらった。

それでようやく中に入って検針してたら、ポケベルか携帯電話ででも呼び出されたのか、管理人のおばさんが「へっへっへ」という感じで3階までやってきて「あー、検針の人? どうもすいませんねー。ご迷惑かけちゃいましたねえ」と謝ってきた。年は50~60ぐらいで、髪を軽く栗色に染めて、笑った口の中が真っ暗で歯があんまりないみたいだった。

見た感じ、北関東出身で、中学を卒業と同時に上京、美容院で2ヵ月だけ働いた後はバーや飲み屋で生きてきた、酒と男をこよなく愛する女の人のように感じられた(勝手な想像だ)。

僕が「今までどこに行ってたんですか」と訊くと「ええ、まぁ、そこら辺をブラブラ、ハハハハ」と笑っていた。なので、サボるのは構わないが、管理会社にばれないためには、二ヵ月に一度の水道検針と毎月の電気・ガスの検針の日をチェックして、この時だけは席を外してはいけない、後はパチンコでも何でも……とアドバイスしておいた。まぁ、憎めないタイプのいい人みたいだったけど、管理人にはあまり向いてそうもない。

でも、そこは大きいマンションでもないし、管理人室はかなり狭いんで、一日中そんなところにいるのに耐えられる人はほとんどいないだろうな。

駅から会社に戻る途中で薬局に行って、薬剤師の人に症状を話したら漢方薬をくれて、それを会社からの帰りがけに寄ったそば屋で月見そばを食べた後に服用したら、かなりよくなった。悪寒が半分以上消えた。よかった。おまけに、なんと今週は水曜に中休みがあるではないか。実は、これを書いているのは2日の火曜日。合計350件をなんとかこなすことができた。明日は休みだ。助かる。