水道検針日記(199Y年4月10日)~やはり4月は入居が多い

今日は久しぶりによく晴れた。今まで今週はずっと雨だったから、単純に天気がいいというだけで嬉しい。仕事がはかどる。カッパを着ないでいいと本当に楽だ。今日の現場は、V町が2冊。合計310件くらい。

ここは比較的楽なところで、特に片方の冊は8割がマンションなのですぐに終わってしまう。この頃、4月だけあって相変わらず入居が多いですね。メモを入れても連絡がない場合は不動産屋に電話で問い合わせしたりしてけっこう大変だ。

やはり4月は学生らしき人の入居が多いですね。今日は「水道の開始手続きがまだのようなので、お名前と入居日をおしえてもらえますか?」ときくと、ここはカノジョの部屋で自分は遊びにきているのだが……とか、女の子二人で料理を作っていたりとか、長髪の男がぶっきらぼうで答えたりとかいろいろあった。

みんな今日は天気がいいせいか一様に表情が明るいように思えた。

 

今日は、昨日検針した所に再調査に行った。あるアパートがあって、部屋の前に大きな2mくらいの長さの冷蔵庫を置いてある家があって、この冷蔵庫の下にメーターがある。

1年くらいここ近辺を検針して、今日初めて部屋の人がいて、僕が検針することができた。30代のさわやかな大学中退風の男が来て冗談をとばしながら、冷蔵庫の中身を取り出して冷蔵庫を動かしてくれた。

そのうちに中から40代半ばの肉体労働風男がでてきて、これから検針するときは1週間くらい前に連絡してくれとか言われて、えと、まあこのことには色々面倒なことがあって、ごちゃごちゃ言ってたら、段々男がイライラしてきて「お前が一体何を求めているのかわからない。なんだよ、バカにしたような目でこっちを見やがって。いかにも論が立つんだって顔してよお」とにじり寄ってきて、本気で殴られるかと思った。こういうことは今までに何回かあったなあ。緊張するねえ。

この人たちはテキヤで、冷蔵庫の中身はフランクフルトなんかが多かった。それにお好み焼きのタネを混ぜる器具なんかが置いてあった。

結局殴られることはなかったけど、こういう時はなんとなく後味がよくない。次の家の検針をしてたら大学中退風男が来て「お兄さん、ごめんね。あの人酒飲んでるからさ」と言いに来てくれた。

ああいう肉体労働者風の友人が僕にもいるけど、彼らはいわゆる一般の人が想像できない位にいろんなことにコンプレックスを持っている。学問がないことだとか、いわゆるいい仕事に就いたことがないことや親にあまり愛されなかったことだとか、出身が貧しいとか、それが故に女性に愛されないとかいろんなことだ。

過敏にささいな言葉に傷つくかわりに、その反動で怒りは激しい。悪い人じゃないんだけどな。

さて、会社に戻ってから処理を済ませて、僕は所長宛にメモを書いた。今日が検針員の契約書の提出期限日なのだが、組合側が会社側とまだもめているので、僕は契約書を出さないことを伝えるためだ。3月に団体交渉をしたのは、本ホームページの読者ならご存知のはずですね。

結局、成果らしいものは0,5円しか単価が上がらなかった。それは妥協するとして、問題は組合に通告なしに契約内容を変えたことだ。例えば、60才定年制とか9-4時に検針の時間を制限するとか。今後のこともあるし、組合としてはこのまま黙って見過ごすわけにはいかない。

**地区では7,8人まだ契約書を出していないらしい。**地区では多分僕一人だろう。契約書を出さないことで、僕に圧力がかかってくるかもしれない。すでに「あんまり跳ねたことするなよ」という風な警告を受けている。ま、でもリンチに遭うわけでもなし。社員はみんないい人だし、陰湿ないじめみたいなことはないだろう。