水道検針日記(199Y年5月18日)~慣れと引き換えに失うもの

今日は朝から雨が降っていた。正確にいうと、昨日の夜からずっと降っていた。今朝、ラジオで天気予報を聞いたら一日中降り続くとのことだったので、仕方ないなぁと思って、会社を出るときにカッパを上下と長靴をはいていった。

結局、雨は昼前にはすっかりやんでしまったので、カッパはそんなに長い時間は着なかったのだが、どうも蒸れる。

5月の時点でこれだから真夏ともなれば尚更に違いない。蒸れるとまず第一に中で汗をかくし、カッパそのものが臭くなるし、その他諸々の局地的かゆみなどが予想されて非常に困る。

ついでに帽子をかぶっていると、これも汗をかいて暑い。おまけに前髪がつぶれて、裾がはねる。僕は平均より汗はあまりかかない方なんだけど、体力の消耗も早いこともあり、検針にとって夏が一番こたえる季節だ。明日も雨が降るそうだが、件数が少ないので大して面倒なことにはならないだろう。

今日の現場はB町3丁目と6丁目。合計300件くらい。金曜日に460件やった後だから300くらいは楽に感じられる。どうも今日は体が重くて力がでない。こういう時はガマンして淡々と数を消化するのみだ。

僕は検針の仕事を始めて2年ちょっとたって、各現場を2ヵ月に1回まわっている。だから、すでに一ヵ所を12、3回まわっていることになるので、現場の様子は大体わかった。「わかった」というのは、例えばメーターの場所や犬の有無、メーターの上の積載、うるさい家主がいる家などなどのことだ。

もうメーターの場所は一々思い出そうとしなくても、「ここは庭の左隅だな」とか「ここは裏の勝手口の前だった」などと家の前に来ただけですぐにぱっとわかってしまう。

例え他の考えことをしながら歩いていても体が勝手にメーターの方向に進んでいる。こうなると、仕事の進み具合は早いし、メーターを探したり、エアコンの室外機などに体をぶつけるようなことはないが、その分新鮮味が薄い。

一言で言って感動がない。以前は、マンションのメーターボックスの中にワインが置かれていたら「こんなとこに置いといて盗まれないかな。俺が持っていってしまおうか……」などと考えたし、「おしらせ」を渡しに店に入っても毎回客が一人もいない寿司屋には「よくやっていけるなぁ」と訝しく思ったものである。しかし、今ではそれがない。すべてが「そういうもの」になってしまった。まあ、そういうものだ。

 

昼休みはモスバーガーで食べた。特にうまいとは思わないんだけど、今日はなんとなく入った。チーズハンバーガーみたいなのを二つとオレンジジュースMを頼んだら730円くらいかかった。730円。

ここのハンバーガーの材料は有機野菜や健康ビーフみたいなのを使用して実にヘルシーらしい。こういうとこに来るのは高学歴で金を持った人たちが多いはずだ。それにしても730円は高い。