水道検針日記(199X年7月22日)~犬が逃げた・・・

この頃、どういうわけか朝起きるとつらくて会社に行きたくない。このまま昼過ぎまで寝ていたいと強く思う。一人でやる仕事だからいやな人間関係もないし、今日なんて起きたのは9時半なんだけどね。電車に乗っちゃえば平気なのだが。僕みたいな人は全国に何百万もいるんだろうなあ。

今日の現場はB町で合計300件くらい。そのうち90件は応援で、本来は僕の担当の冊ではないところ。6月に人がやめて、新人が入ったばかりなので僕がやることになったらしい。いやなら断ることもできるのだが、事務のN村さんが笑顔で圧力をかけてきたせいもあり無碍には断れない。まあたった90件だし。

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イメージ写真

初めの冊をやっていて、40件目くらいのとこで一戸建ての家のアルミの門を開けて、30秒もしないうち出るんだからと思って閉めずにいたら、5秒もしないうちに犬がサーっと外に出てしまった。この家に犬がいたなんて記憶がなかったので油断していたのだ。

犬は僕の気持ちを見透かすようにこちらをチラと向き薄笑いを浮かべて(いるように感じられた)タッタッタと軽快に走っていった。やっばーいと思って少し追いかけたが、もちろん追いつけない。たまたま近くにいた電気検針のおばさんに「犬見ませんでしたか」と訊いたら5分くらいここにいるけど見てないとのことなので仕方なく犬の自宅に戻り、事情説明した紙をポストに入れて仕事を続けた。待っているわけにもいかないし。

それで仕事を終えて会社に戻ったら、やはり怒りの電話がかかってきたそうで、明日所長が菓子折りをもって謝りに行くらしい。でもさ、菓子折りまではいいんじゃないの?


この冊の終わりの方でおばさんがジュースとゼリーをくれた。去年も同じ時期にこの人はやはりジュースをくれた、もう70は越えていそうなのでおばさんというよりは、ばあさんと言うべきかもしれない。

彼女はその位の年で顔を濃い目に白く塗って口紅もちゃーんとつけているので少しこわい。こう暑いと冷たいものは嬉しい。それに見ず知らずのお客さんから親切でもらうのは特に嬉しいものです。他の検針員にきいてみたら、けっこうみんなお客からジュースやお菓子をもらっているみたいなんだけど、僕はあんまりそういうことがない。

サンドイッチとおにぎりをファミリーマートで買って昼休みを公園でとった。

最後に応援の冊の検針をやった。やっぱり初めてのところは、メーターの位置がわからなくて通常の1、5倍は時間と労力がかかる。疲労がたまってきたのか3時ころから日差しがきつく感じられてきてキビシかった。階段を降りている途中で足がもつれてもう少しで転ぶところだった。