水道検針日記(199Y年9月14日)~仕事終わりに居酒屋

今日は朝からよく晴れた。9月も半ばになって晴れたと言っても空気は乾いてさわやかだ。今日の検針は全日程中一番数が多い460件の日だ。460件は奇数月の半ばに来て、これを越えると下り坂で次第に件数が減って楽になる。

いつも通りに先にB町150件を検針。1件目の家で一階が自宅、2階がアパートで他人に貸している家があって、そこのばあさんに「ねえ、ここにゴミが置いてあるでしょう。これは最近越した人のもので、この何十倍もたくさんゴミ捨て場に捨ててあってねえ、近所の人の迷惑になるから、あたしがちゃんと分別して少しずつ出してるのよ。まったく、○○省の技官だっていうから安心してたけど、もうとんでもない。お家賃を滞納するんでどうしようもなくて、不動産屋さんと話し合ってもう出てもらおうってことになったら、引越代出すなら出ていくですって。もうねえ……」。

結局、大屋さん側が引越代を払ったのかきかなった。残念。そこに住んでいた人はサラ金から金を借りていたらしく、取りたてがよく来たらしい。官僚のようなエリートでもそういうのがいるんだなぁ。

これは朝から面白い話を聞いた、ラッキーと思っていたら、いつも小学生低学年くらいの大きさの犬が2,3匹いる家に今日は一匹も犬がいなくて気が緩んだのか、立てかけてある小型の鍬みたいなものの金属部分を踏んでしまった。

それでどうなったかというと、金属部分が踏まれて、柄が地面に垂直に立ってしまって、僕の上唇を直撃。鼻とか目だったら大変だった。後で鏡で見てみたら上唇の内側に血豆ができていた。水道メーターはいろんなとこにあるので、集中して周囲に気を配っていないと痛い目にあう。

僕は時々、メーターの蓋を閉め忘れるなどボーッとして仕事をすることがあるんだな。

2冊目はK町で310件。1冊で310件というのはかなり多い方で、これは初めは220件くらいだったものが、ここ2年の間に該当地域に8階建てくらいのマンションが2軒も建ってしまい、いつのまにかこんなに多くなってしまった。

もう今更いうまでもなくK町の全域は完全に都市化されてしまっているが、国道近くに小学校の畑と昔の農家がある。畑は委員会の所有らしい。イモでも植えているようだ。

農家の方は以前に何回か書いたことがあるように、コンクリートの塀に囲まれた広い敷地に入ると時代が30年くらい昔に戻るような錯覚を覚える。家は完全に田舎の農家の造りで、井戸、納屋、祠などが博物館的にひっそりと佇んでいる。検針の仕事をやらなければ、この町の一角にこんな家があることを知ることはなかったろう。

検針は1時から始めて4時15分くらいに終了。マンションなどの集合住宅もあるが、反面、庭付きの一戸建ても少なくないので時間がかかってしまった。前回は確か、10時過ぎに出勤したので、5時に終わって遅刻した。今日は頑張って9時過ぎに会社に着いたので大丈夫。

会社に戻って書類整理などをしながら同僚と話をしているうちに、明日は休みということもあって飲みに行くことになった。結局4人で駅北口のナントカ水産という居酒屋へ。

ここは7時まで生ビールが50円! 酒が飲めないはずの僕も暑い日の生ビールは好き。本当は社員も誘おうかという意見もあったが、なんとなく社員と検針員の間に壁みたいなものがある。管理する側とされる側という関係だ。検針員の愚痴が社員にとってはカチンとくることもあろうし、またその逆だってあるだろう。

よく考えてみたら、検針員同士で盛り上がるネタは大抵、社員にとっては「おいおいおいおい、それはマズイよ~」という事柄かもしれない。だって、一人暮らしの年寄りの話を聞いてあげて喜ばれたとか、今日は3件漏水を発見しただとか、誤検針ゼロで誉められたなんて話してもあまり面白くないし、全然ストレス発散なんかできないもんねえ。