振り返る水道検針【1】

水道検針を辞めてからもう20年以上経ってしまった。辞めて最初の5年くらいの間は、ちょくちょく検針の夢をみた。夕方4時半くらいになってもなかなか検針が終わらずに、どんどん暗くなっていく。かなり焦りながら雑に検針をしていくが一向に終わる気配がなく「わぁーー!」と叫びたくなる。そんな悪夢(笑)。

しかし、そういう夢もいつの間にかみなくなり、検針の記憶がかなりおぼろげになってしまった。日記を読み返しても、なんというか、検針をする肉体的な疲労感とかお客さんと接する緊張感とかをよく思い出せない。

あと、僕が検針していた地域をGoogleストリートビューで見てみると、古いアパートの多くがすでに消えてしまって多くは小綺麗な一戸建てに変わっていた。一番ショックだったのは、K町の300坪くらいの敷地に昔の農家の屋敷や祠、古井戸などタイムカプセルのようにのこっていた家がマンションになっていたこと。恐らく相続税のために売らざるを得なかったのだろう。
またK町の「ぼぃんぼぃん」などの風俗店も完全に消えてしまったようだ。今では健全な飲食店に変わっている。だから僕が苦労していた女の子の写真が貼られた風俗看板ももうない。20年という時間の重さを改めて感じる。

現時点ではまだあまり出てないこないが、これから検針中に老人と接するシーンがたびたび出てくる。僕としては検針をやって一番驚いたのが孤独な老人の多さ、そして年をとることの悲しさだった。今、読み返しても、心がチクチクしてくる。検針日記の肝の部分が老人との交流である。