水道検針日記(199Y年2月4日)~マンションの検針は・・・

今日はW町とV町を検針。合計394件くらい。約400件と件数が多いけれど、半分以上がマンションなのでそんなに大変ではない。

マンションを検針している時に感じるのは、大きい高層のマンションには生活の臭いとか人が住んでいる感覚というのが非常に希薄であるということ。

ボロの公団住宅なんかでは、廊下に勝手にダンボールやら生ゴミやら箪笥なんかまで置いている。それにそういうとこは、住人同士の間の関係がしっかりあるし、ドアの奥からテレビやら話し声なんかの音がするものだ。

僕に何かしら声をかけてくれることも珍しくない。管理人がいる家賃の高そうなマンションは、喜怒哀楽のある、なんというか生身の人間が生活しているという感覚があんまりしない。ドアを固く閉ざして外の世界とは一切関わりをもっちたくないという拒絶みたいなものを勝手に感じる。

こういうとこは、廊下を歩いていると少し恐い。あまり日がささないし、ひと気がないし、構造的にすぐ他に逃げられることはできにくい。誰かおかしな人が刃物を持って……なんてことを今日のようなうす曇りの寒風吹きすさぶ日に考えると、けっこうぞっとする。

家族が住むところだったら、子供を媒介にして住人同士の関係が生まれることもあるけれど(小学3年生くらいの女の子とエレベーターに乗ったら「こんにちは」って挨拶してくれた)、これが今日やった蜂の巣みたいに密集したワンルームでは、住人はみんな一言も口をきこうとはしないんだろうな。

中には管理人さんが声をかけても一切無視する人もいるぐらいだもんなぁ。ううーん、高度消費社会が生んだ現代の貧困というやつか。でも本当はみんな他者との関わりを心の中では求めているんだよね。4時半頃、会社に戻ったら社員が会議を開いていた。また何か問題が発生か……。