水道検針日記(199Y年8月5日)~マンションの管理人

昨日は、昼過ぎに突然雨が降り出した。まさか雨が降るとは思わなかったのでカッパは持ってきておらず、そのまま雨の中検針した。暑い中ちょうどいいシャワーというのもあるし、どうせカッパを来たところで、蒸れてシャツは濡れてしまうので、着ても着なくてもそんなに変わらない。

何年か前に、ドーム球場が増えることについて大リーグの選手が「雨や風を感じながらやるのもいいものだ。ドームになっていつも同じ天気じゃつまらない」と言っていたが、検針員である僕も同感である。

雨や日照りや雪など様々な天候の下、寒さに震え、暑さに汗をかき、時には苦労もするのがいいんだよ。そんなことを言いながらも、昨日は昼休みの休憩を市民会館でとって、エアコンでよく冷えた空気のあまりの心地よさに「ここは極楽なのか、それともただの市民会館なのか……」と自問してしまった。ここではあの下克上おばさんには遭遇できず。次回を期待したい。

 

今日の現場はW町とH町。合計390件。ここは両方ともマンションが多いところで、件数の割には仕事は楽で、終わる時間も早い。W町の冊のポイントとしては、70件ほどあるマンションの管理人のおじさんがとても親切で新入居者の名前と入居日も快くおしえてくれる。

ところで管理人さんて一日のうちに何回か建物の内外を掃除をするんだけど、勤務時間の大半を狭くて日がささない管理人室の中で過ごしている。定年退職した人が安い給料でやる仕事だからあんまり文句は言えないのかもしれないが、見ていてなんとなく気の毒でもある。

でも、H町の某マンションでは僕が行くとしょっちゅう「管理の仕事で外出中」とあって(最低でも1時間半くらい帰ってこない)、仕方なく僕はインタホンで入居者に1階のドアを開けてもらっている。これが連続して3,4回も続いているので、これは管理人がうまくさぼっているんじゃないかと僕は推察している。

そういえば、そこの管理人は、以前、選挙のビラを近所で配っていたしなぁ。W町で少し楽しみなのは、生協の本部みたいなところで、そこには通常の水道メーターの他に雨水をためてトイレなどに利用する下水専用のメーターがある。

それは制御室でパソコンを操作して見る。そこの管理のおじさんがニコやかですごくやさしい。おまけに大学のサークル時代の友人になんだか似ている。あの顔を見るとなんとなく落ち着くんだな。軽い世間話をしてそこを辞去。

H町ではマンション2軒の集合メーターが140くらい続いて終わる頃は頭がクラクラした。帰りは公園の濃い緑の中を自転車をゆっくりこいで帰ってきた。気持ちがいいなあ。

会社に戻ったら坊主頭の南田君(仮名)がいて、月末の休みのことを訊いたら、東名用賀インターでヒッチして京都まで行ってそれからまたヒッチで金沢に行ったという話を聞いた。金がないならないなりにうまくやるもんだな。それに自由な時間があるというのは、金があるのと同じくらい豊かでもある。いいなあ、検針員は。

先日、大学時代からの友人と話をしていて、不景気で会社が危ないと言っていた。世間では不景気で物が売れなくて大変らしい。銀行も金を貸してくれないし。一方で検針会社ほど景気の動向と無縁な会社もないね。社員も検針員もその点ではすごく感謝している。