水道検針日記(199Y年11月18日)~あんまり仕事をあれこれ変えちゃだめよ

獅子座流星群が日本上空できれいに観測できるとテレビなどで盛んに言っているものだから、今朝方、3時に起きて(昨夜11時半に就寝)公園にいってその流星を見た。5時近くになって部屋に帰ってそれから9時半までまた就寝。

会社に行くと、話題はやはり流星のことで「ね、流星見た?」と何人かが言っていた。同僚の某氏は、昨夜、街で飲んでいて、飲み屋の中で皆その話題で大いに盛り上がったらしいのだが、酒飲みの常にして、やはり面倒なことはできなくて、さっさと酔いつぶれて他人の家で寝てしまったらしい。酒飲みはやっぱり酒を飲むこと以外できないよ。

今日の現場はN町の団地とK町。合計280件くらい。初めにいつも通りN町から。今日の検針は出勤時間が遅かったため、11時半から開始。

平屋と3階建ての建物が半々あり、比較的検針しやすく、12時45分頃終了。3階建ての方で、いつもは2,3件しかでない「ピー音(4割以上の増減、開始手続きしないまま使用等)」が鳴らないのが、今回は7,8件あった。

しかも1件、空き家でありながら5立方も使用してあって、2立方までなら誤差の範囲で済むのだが、こういうケースは、料金負担者を特定して、請求先を聞き出して、それから開始手続きの用紙にいろいろ書き込みをしなくてはならないので、超めんどくさいんだー。あー、もう思い出しただけでイライラしてくる。

その後、昨日検針した分の再調査を終了させて、K町商店街の一角にある中華料理点で炒飯を食べ(ここの炒飯はけっこう塩辛い)、それから検針を開始。

この冊には、いつもタバコをくれるばあさんがいる家があるのだが、今日は不在。その家の前に、かつて某省庁に勤めていて、かつて昭和天皇を何回か見たことがあり、隣の自分が経営しているアパートに、店子の一人が妹にも風呂などを使わせていたことに憤っていることを話していたばあさんがいる。

そこの家に行くと、門のところに「水道検針の方お入りください」という張り紙が画鋲で留めてあった。これはいつものことだから気にならない。しかし、今日は玄関にも「**さん、どうぞ中に声をおかけください」という張り紙があって、メーターがある庭の隅の木にも同じメモが紐で結わえてあった。

「うーん、これは何だ……」と怪訝に思っていたら、ばあさんが出てきて、「この間はどうもお気を使っていただいてありがとうございました」と前々回に増メモを入れたことを、律義にまだ感謝してくれていた。

それから問題の住人が出ていってくれてスッキリしましたわ、などという話を聞いているうちに、突然「**さん、あなたね、あんまり仕事をあれこれ変えちゃだめよ」と真顔で言われた。

「仕事やってるとね、いろいろ嫌なことがあるでしょうけれどね、我慢しなきゃだめよ。あたしなんかもね、◎◎省で20年も働いていたからね、そりゃぁ辛いこともたくさんありましたよ。でもね、そういう時は美味しいものでも食べてガマンするの。20代、30代というのはそうやって過ぎていくの。50代位にもなるともう楽になりますけどね」

僕はその言葉を聞いてひどくびっくりした。実は、今月はこの検針日記に書いていない様々な事柄でも検針の仕事にかなり疲労を感じていて、憂鬱な気分で仕事をすることが多かったのだ。正直なところ、もう辞めてしまいたい気持ちもある。今日もイライラすることが多かったし。

まるで彼女は、僕の気持ちを見透かしているかのようだ。84才でありながらパソコンを操ってインターネットで僕のホームページを愛読してくれているのだろうか。

僕が「あのー、僕はそんなにツラそうな顔に見えますかね」というと、「ううん、そうじゃないよ。ほら、最近の若い方はあれこれ仕事を変えてしまうでしょ。どこも長続きしないようじゃだめなのよ。それからお金を貯めなさい。ギャンブルなんかやっちゃだめよ」と彼女は言って、キレイな半透明な赤色の石鹸を二つくれた。

これはアパートに住まわせている明治の女子大生にも評判がいいんだそうだ。それから、今度は来年の一月よね、またいらしてね、そのときは声を掛けてくださいね、よいお年をね、と言われてその家を出た。

寂しい老人とはいえ(という言い方も失礼だが)、他人から心配してもらうのは嬉しいものである。なんだか、それからいくらか気分が明るくなった。

会社に帰って同僚にこの話をすると「いいなあ、俺んとこの客はイヤな奴ばっかですよ」と南田くん(仮名)は言っていた。そんなことはないよ。

僕にしても心暖まることより、不快な思いをすることの方が数としては圧倒的に多いし。

それにしても、今日は「ピー音」が鳴ることが多かった。メモに前回水量と今回水量を書いて、さらに「何か変わったことがありましたか」という主旨のメモをポストに投入しなくれはならないんだよなぁ。これがさ、20立方から40へと倍に増えたのならまだしも、17から25とかさ(基本料金は20以下)、けっこうストレスがたまる。

水道検針日記(199Y年11月16日)~公園で遊ぶ母子

ここ2,3日とても暖かい日が続いている。今日は作業服を薄いのと厚いのと二枚重ねて行ったのだが、途中で薄手の青い服一枚にした。

先週は中休みもなく、350件前後の日が続き、金曜は山場の460件があり、キツイ週だった。これを乗り越えれば後はずっと下り坂だと思って頑張った。

僕なんかこれくらいで厳しい、疲れた、休みたいなどと泣き言を言っているが、10年やっているベテランの50才前後の検針員らは、月に6000件ぐらいやっているので、一日平均なんと400件もやっているのだ。

多い日には600件もあるらしい。それで彼(女)らは全然平気らしい。その人たちが、僕などの泣き言派と違う点は、第一に学童期の扶養家族がいるということだ。やっぱり子供を高校や大学に行かせることを考えると、ちょっとやそっとのことでは疲れなくなるのだろうか。

というわけで今週は山場を越えた比較的楽な日が続く週で、非常に嬉しい。今日はまだ300件あったが、明日は160件くらいだ。今日の現場は二冊ともB町。

今日は出勤時間が10時半近かったので、検針を始めたのが11時頃だった。のんびりやって12時40分頃終了。それから近くのモスバーガーハンバーガーを買って、次の現場の近くの公園で昼休みをとった。

なぜかここの冊の日にはモスバーガーを食べたくなる。ちょっと高いけど、マクドナルドなんかよりずっとうまいし、それに二ヵ月に一度のことだし。それで、その公園のベンチに腰掛けて一人で昼食を摂っていたのだが、そこの公園には、今日はどういうわけか小さい子供連れの主婦がたくさんいた。

いつもは一人二人なのに、今日は数えてみたら7人くらいいた。まぁ、ここらみたいな地縁が比較的薄い地域では、同じような境遇の主婦の友達が欲しくて、お母さん達は公園に集まってくるのだろう。それで初めて公園に行く緊張の日を「公園デビュー」と言うのだそうだ。

この「公園デビュー」という言葉を聞いたことがある人はたくさんいるだろうが、実際にその公園でのお母さんたちの、笑顔の影の緊張した表情やどこかぎこちない会話の様子を見聞きしたことがある人は少ないんじゃないだろうか。何の関係もない僕がぼーっとしながら見ていると、公園によってお母さんたちの関係が多少違うみたいだ。

繁華街に近かったり、規模が大きいと、お母さんたちの顔ぶれが変わって流動化が激しく、また、駅から遠い住宅街の小さな公園では大よそメンバーが一定するみたいだ。狭い経験の範囲で僕が見たところ、小さな公園ほどお母さんたちの関係は親密で、多少のぎこちなさはあっても、会話は活発で仲が良い。

大きい公園では、中学高校の女子グループみたいにお母さんたちの間で「仕切る人」と「仕切られる人」の関係ができているらしいところもあれば、お母さん同士の間で会話がほとんどなく、お母さんと子供のペアが各自で世界を作ってブランコや砂場やジャングルジムで「一生懸命」遊んでいるようなところもあって、あんまり居心地が良さそうではない。いじめもあるんじゃないかと想像してしまう。「公園ジプシー」なんて言葉もあるみたいだし。

今日もハンバーガーを食べながらぼんやり聞くともなく聞いた話は、まぁ、しょうもない世間話だったんだけど、暇な時間があるお母さんたちも、それなりに大変なのだろうと思う。旦那さんが仕事から帰って来るまでの間、子供とだけびっちり一緒にいるのも辛いだろうから、近所の公園で気の合う仲間を見つけることができるかは大問題なんだろうなぁ。

それで今書きながら思ったんだけど、小さい子供を抱えた主婦の友達が、同年代の子供を持った女性だけに限られなければならない訳はないんだよね。いろんなイベントに参加して年齢や性別にとらわれずに交流を広げられればいいのに。そこでネックになるのは、やはり異性関係で(子供を持った既婚女性ということで、ここでは異性愛者のみに問題を限定させてもらいます)、どうしても大人の男性とは交流を持ちにくいようだ。

これは、最近、家族関係の本をちょっとかじった僕に言わせると、彼女たちが賃労働の職業を持たない専業主婦であることに要因の一つがあるのだろう。職業を持った子持ちの女性をあまり知らないので比較できないのだが。

現金を家庭に持ってくる夫に対して、家事一般と子供の面倒をみる妻は直接的な金銭の収入はないが、家事・育児などの妻としての務めを果たす限り、彼女の生活は保証される。しかし妻が他の男性と親密になり、夫に「裏切り行為」と判断されて離婚でもされたら、彼女の生活は途端に行き詰まってしまう。(それに、両親の離婚は子供の発育に影を落とすことになるのではないかという不安もあるだろう。)

「愛する家族のために頑張る」という「愛のイデオロギー」が崩壊すると、専業主婦はたちまち経済的に危機に陥る人が多いはずだ。こういうことを書くと、なんだか専業主婦が哀れな存在のように思えてくるかもしれないが、現実は必ずしもそんなことはない筈で、もちろん様々な不満を抱えながらなんとか幸せにやっている人が多いんだろう。

しかし、そんなような経済的な不安感が彼女たちの行動にブレーキをかけている面も否定しきれるものではないだろうし、また、経済的な自由がないばかりに、理不尽な苦痛を強いられる女性だって少なくないのも事実である。インドとか東南アジアなんかわかりやすい例だろうね。

その後、二冊目を3時過ぎに終了。それから大通りりを東に向かい、金曜の分の再調をして4時過ぎに帰社。会社では書類整理をしながら、同僚と「客と怒鳴りあいになったことがあるか」ということが話題になった。

僕は二回ほどある。そういうときは、大体こちらの気分がイライラしてる時なんだよね。あんまり思い出したくない。同僚の某氏は、メーターの場所がわからなくて、庭をうろうろしていて「おい、そこで何やってるんだ!」っと言われると、ドスをきかせて「水道の検針です」と相手の目を見つめながらゆっくり言うみたいで、「そういうときは必ず勝ちますよ。ふふふ」と笑っていた。うーん、それもなあ……。

水道検針日記(199Y年11月12日)~保育園児

この頃、ちゃんと寒くなって空気も冷たくなってきた。気づけばもう12月もすぐそこだ。朝晩は冷えるものの、日中はまだけっこう暖かくて検針をするにはちょうどいい。

でも、時には風が吹く日もあって、そういうときは鼻水がじゅるじゅるとしがちだ。それで、知らない間にすっかり手鼻がうまくなっていたりしてね(笑)。

今週は月曜の240件を除いてずっと360件以上が続いて、明日は山場の460件が控えていて、しかも中休みがないので一番キツイ。来週も中休みはなく、5日間連続勤務だが、件数ががくっと減るので随分楽になるだろう。

今日の現場はB町とK町。合計360件。

初めにB町。ここには某著名人と大きな旧農家の屋敷と幼稚園がある。庭が広い家が多くて、比較的に好きな所だ。旧農家の屋敷には植木屋が4人も来て作業をしていた。

大きな樹木が多いからクレーンを使っていた。屋敷の近くに2軒幼稚園があって、そのうち私立幼稚園のメーターが運動場の片隅にあるので、毎回、先生に声を掛けて、園児が遊んでいるのを横目に見ながら検針をする。

今日、メーターを開けたらメーターボックスの中が土でいっぱいになっていた。蟻が中に巣を作っていたのだ。それで僕が検針棒を使って中の土をかき出していたら、子供たちが4,5人だーっと駈け寄ってきて「ねー、なにやってるのお?」と円になってメーターの周りを囲んだ。

それから土をちゃんとかき出すだめに園児からシャベルを借りて掘ろうとすると、一人の元気のいい男の子が「ボクがやるー」とせっせと働いてくれた。それで、ようやくメーターが発見されたら数字を読ませて、その数字をハンディに打ち込んで「こうやって水道の料金を計算するんだ」と一応説明したけど、まだあんまりよく理解できないみたいだった。

のんびり子供に掘ってもらったりして結局5分ほどいただろうか。その間、保母さんは何事かと心配になって様子を見に来ることもなかった。子供への学習効果をちゃんと考えているのだろうか。事なかれ主義で管理が厳しいところだと、部外者と園児の交流を妨げるところだってありそうなのに、なかなか感心である。

それで今日は4,5才の子供たちと交流したわけだが、その時気づいたのは、園児の服装が物凄くコギレイで、スタイルがびしっと決まっている子が多いことである。お古とか染みをつけた服を着ている子は一人もいないみたいだった。ミキハウスが子供向けのブランド服を売り出していて着実に売れている、という記事をどこかで読んだ覚えはあるが、実際にその状況を実感したのは初めてである。

子供が着る服だからといって舐めてはいけなくて、上下そろえて2,3万円もするのはザラだということだった。言うまでもなく、幼稚園の子供に服の趣味だとかブランド意識なんかほとんどあるわけもなく、全て親の考えや趣味で着せているわけだけど、皆さんはこのような傾向をどう思いますか?

もちろん経済的に余裕がある家庭が、自分がブランド物が好きだから子供にも……というようなケースは昔からあった筈だ。しかし、現在の状況の特徴は、それがそれほど「いいとこの子」でなもない子供にまでも裾野が広がっている点にある。

中には「子供の服にこんなに金をかけるなんてアホらしいけど……」と思いながらも、周りがキレイな格好をしていると、圧力に負けて実家の親に泣き付いたりしてでも買っちゃう親もいるんだろう。「だって章太郎が幼稚園でいじめられたら可哀相じゃないの」とか。でもやっぱりね、これ見よがしに高そうな服を着せるのは趣味が悪いし、そもそも子供のためにそんな金をかけるのは相当に馬鹿げているよね。

周りはどうあれ、必要のない物は必要がないんだと親がしっかり思想を固めないと。それはそれでキツいことは多いだろうけどなぁ。

B町の検針が12時過ぎに終了。休憩を入れて12時40分くらいからK町の商店街の一部とその周辺の住宅街を検針。以前にも書いたことがあるけど、ある商店と商店の間の道路から5mほど入った所にメーターがあって、しかもそのメーターの手前にパイプが通っている。

そのため僕は、商店のトタン壁とパイプのわずかな隙を胸を圧迫されながら通ることになる。

それで今日、商店のばあさんが出てきて「これでうちの壁が壊れたらどうしてくれるの」と僕に文句を言った。僕としても胸が圧迫されるのが好きなわけでもないので、どうしたらメーターをもっと道路側に移動できるかちょっと話をした。

ばあさんが言うには、水道局になんとかしてくれと頼んだところ「あなたは、すでにそのメーターの移動を求めないことに同意の判子を押しています」ということで相手にされないのだが、しかしそれは、そのばあさんの店の隣にまだ何もなかった時代のことで、40cm隣に店ができた今日では事情が違う、何回水道局に頼んでも「検討しておきます」と言うだけで逃げられてしまいどうにもならない、かといってパイプを使っている店の地主は恐い人で、メーター移動の話をすると(移動費用をかけたくないので)「お前らのとこに火をつけるぞっ」と脅しをかけてくるんだそうだ。あれだけ入り組んでゴミゴミした地域では、こういうこともあるんだよね。

検針を3時に終了させて、それから昨日やった所の再調査を終えてちょうど4時半帰社。疲れた。同僚の南田君(仮名)は会社で大きなシュークリームを一人でうまそうに食べていた。今日は仕事をしながらどうしてもシュークリームを食べたくなったんだそうだ。

水道検針日記(199Y年11月6日)~誤検針

今日は今期一番の冷え込みになったようで、風も冷たかった。夏場から昨日まで青い薄い生地の作業着を着ていたのが、今日から「知られざる水厚い生地の服に衣更えした。

これからもっと寒くなっていって、読者の皆さんは、また検針には大変な季節になるかと思うかもしれないが、実はそんなことはなくて、暑いのに比べたら体力消耗が少なくて体にとってはすごく楽なのだ。まぁ、年が明けたらいつ雪が降るかもしれないということで、それが唯一気がかりではあるが……。

ところで、今日の現場はB町とK町。合計350件くらい。B町には夏に92才で亡くなった、一人暮らしをしていたMさんの家がある。

前回と前々回はメーターを見ることができなかったのが、今日行ったら近所に住む息子さんが来ていてブザーを鳴らしたら出てきてくれた。僕が靴を持って家に入って勝手口から外に出て、カニ歩きで隣の家との塀際を歩いて行ったら「そんなとこにあるんですか」と驚いていた。

それで軽く亡くなったMさんのことを話して(寝込むようなことがなくてよかったですね、とか)、僕が何回かMさんと話をしたことがあるというと、「あ、そうですか。寂しかったですからね。……私も仕事で遠くに住んでいて悪いことしました」と言っていた。息子さんは毎日のように線香をあげに来ているようだった。もしかしたら、贖罪の意識のようなものがあるのかもしれないと思った。


そのMさんの少し前に小さな一戸建ての家があって、その家のメーターを検針したら、だだっと中からおばさんが出てきて「ね、今回はどう?」と訊かれた。これはどういうことかというと、前回の時に水量がいつもの5倍ほどの料金になっていて、話を聞くとどうやら僕が誤検針した可能性が高いのだ。

前々回の水量が7、前回が62、今回が27立方。前回分から30くらい引いて、前々回分に足したらちょうどいい数字だ。おばさんの話だと、生活がこの間特に変わったことはないので、そんなに極端に変化するのはおかしいらしい。

それで僕が推測するに、ハンディへの打ち込みを誤ったのではないかと思う。ハンディの数字の並びは以下のようになっていて、

前項 取り消し
次項 ライト
前画面 入力
メニュー 環境 入力

例えば「945」と打つべきところを間違って「915」と4の下の数字の1を打ってしまったことは十分考えられる。7のはずが4、6のはずが3という風にミスをすることはよくある。

他の家なら、30くらいの増減があるとピー音が鳴るのだが、そこの家は、それまでは他の家にいることが多かったのが、前々回の時期あたりから安定して入居し始めたので、それで水量が7でも何ごともなかったのかもしれない。

62ともなると、料金が1万6000円ぐらいにもなったらしく、けっこう痛いだろう。それでおばさんはびっくりして、毎日やっていた洗濯を一日おきにして、シャワーの控えめにするなど、いろいろと節約に励んで、今回の検針の結果を楽しみにしていたらしい。

「もしかしたら前々回に僕が間違って打っちゃったかもしれないんで、そうだとした申し訳ないです」と言うと、彼女は「いいのよぉ、前回は毎日たくさんシャワー使ったから、きっと本当にそれだけ使ったんだと思う。気にしないでね」と笑顔で慰めてくれた。優しい人もいるんだなぁ。

B町の検針を終えると、昨日やったK町の再調査へ。ここで僕は前回大きな誤検針をしてしまっていた。今回、ある飲食関係の店のメーターを見て、数字をハンディに打ち込むと、なんと水量が1078立方にもなっていたのだ。

これは大変な水量で、水道の蛇口を2ヵ月近く目一杯開きっぱなしにしないと出てこない数字だ。料金は64万5000円あまりである。

何回も数字を確認したが、どっからどう見てもそれは変わらない。それで「ものすごい数字になってますけど、何か変わったことは……」と聴取したかったのだが、不在で替わりに増メモを投入。

仕事を終えて家に帰ってきてから、どうしてもそのことが気になっていろいろ考えた。しかし、考えても何がどうなるものでもないので、次第に「本当に自分が見たと思っている1126という数字は、実は126の間違いではないのか」と自分を疑うようになる。

だってそうでもないと説明がつかない。以前、2,3回あったんだけど、メーターを見て数字を機械に打ち込むと通常の何倍もの水量になってしまって、お客さんに聞いてもそんな筈はないと言われると、自分にはどーしても6にしか見えないのだが、これは本当は客観的には5なんじゃないか……という風に辻褄を合わせるように無理矢理考えてしまう。

朝の6時に目が覚めたときも、そのことを思い出して30分ほど考えた。それからまた寝ちゃって少し寝坊したんだけど。

それで今日出勤して、社員さんがいうには、前回、全回転の誤検針をしたらしい。これはどういうことかというと、メーターには3桁のものと4桁のものの2種類があり、それぞれ999と9999が最高の数字でそれを越えるとクルマのメーターと同じように一回転、つまり全回転することになる。

それで前回の数字が本来なら1086なのに86と打ったとすると、ハンディは3桁のメーターが全回転したものと判断して、そのまま通してしまうのだ。それで今回は正しく1164と打つと1078というとんでもない水量が出てきてしまう。

このミスの原因は、本当に86と数字を読んだか、もしくは1086と打ったつもりが、ハンディの画面の切り替わりが完了しないうちに打ったので、下二桁か三桁だけしか打ち込みができなかったかのどちらかだ。

それで、そのお客さんには大変申し訳ないことをした。それで電話で何回も謝っておいた。お客さんは困惑していただけで、特に怒るようなことがなくてよかった。今度、謝罪ながらその店に行こうかなぁ。

水道検針日記(199Y年11月4日)~ここでは何が起こるかわからない

ああ、もう11月か。早いなぁ。今年もあと二ヶ月足らず。なかなか寒くならないおかしな天気で、全然秋らしくないが。今日もNHKクローズアップ現代」を観たら、沖縄の珊瑚がエルニーニョ現象の影響で海水の温度が上昇して、白化→死滅しているとのことだった。

しかも、この減少はオーストラリア、スリランカインドネシアなど世界的な傾向らしい。やばいなあ。やはり温暖化は着実に、そして急速な勢いで進んでいるのだろうか。

今日の現場はK町の商店街とT町。合計340件くらい。奇数月の難所の一つが今日のK町の商店街だ。もう15回くらいここを検針しているので、大分慣れてかなり要領が良くなったとはいえ、やりにくいことには変わりない。

いつも通りに最初にピンサロの「◎◎ガールズ(仮名)」の板をどけてビルとビルの間にあるメーターを検針。それから、呼び込みの男に板が元どおりに直してねーじゃねえか、などと文句を言われるのを避けるために、そこの路地に面した10件ほどをまとめて検針してから、順序通りの1番から開始。

この商店街の苦労するところは、実は正確にいうとラーメン屋とかブティックなどの商店街ではなくて、路地に面したスナックなどの飲食関係などだ。アーケードがある明るい通りを一本外れて路地に入ると雰囲気がけっこう違う。

店舗の一戸一戸が小さくて、なんとなくジメジメっぽくて主婦や子供なんかはほとんど通らない。こういう路地の小さな店のメーターは、建て増ししたせいでメーターが物置の下にもぐっていたり、メーターの上にビールケースや割れ瓶や発砲スチロールが載っていたりと面倒が多い。

しかし、メーターの上に物が載っているのは、何もこういう路地だけではなくて、一般家庭だってかなりそういう所はある。そういう中で、僕がこの商店街を検針するのに苦労というか、常に軽い緊張状態でいるのは、「ここでは何が起こるかわからない」という予測の不確実性の高さにある。

こういうことを言っても、大抵の人には理解されなくて、「歌舞伎町だってK町だって別に歩いてたって何もないじゃないか、全然平気だよ」という意見が多い。でも、匿名の存在として50mを1分で通り過ぎるのと、調べれば簡単に人物を特定される身分で、同じ距離を5分~10分かけて、スナックの看板をどかしたり、ガスメーターを乗り越えてビルとビルの間に入り込んだりしながら通るのとでは丸っきり違う。

まぁ、一応行政関係の仕事なので滅多なことでは暴力を受けることはないだろうが、それでも風俗店も4,5軒あるし、ヤクザっぽい人だって派手な服をきて時々歩いている。

世の中には、本当にいろいろな人がいて、自分としては何でもない行為が誰かを刺激するかわからない。「おしらせ」を届けに僕が店内に入ったら、「水道検針です」という声が聞こえなかったというだけで苦情の電話をかけてくるラーメン屋や、開始手続きがまだのようなのでお名前と入居日をおしえて下さいと言っただけで「ふざんけんな、俺んとこはただで水を使うようなことはしてねえんだっ」と訳の分からないことを言って怒鳴りつける人だって中には実際にいるのだ。

以前、この区域のマンションで水道開始の手続きをしないで使っている部屋があって、ベルを鳴らした後「水道検針でーす、開始手続きお願いしまーす」と何回かドアを叩いたら、突然、90キロはありそうな明らかに暴力団構成員風の男が出て来て「うるせえんだ、ばかやろう、ぶっ殺すぞこの野郎!!」と物凄い勢いでにらみつけられたことがある。

午前11時頃という時間からすると、どうやら寝ているヤクザを起こしてしまったらしい。この時は、本当にヤバイと思った。結局、一発も殴られずにすんだが、この時以来、ちょっと大袈裟かもしれないが、「飲み屋街ではいつ何が起こるかわからないんだ」と僕は心に刻むことした。

以上のように今回はいろいろ否定的なことばかり書いたが、しかしそれは全体の中のほんの極一部のことで、それにどんな仕事だってそれなりの苦労やメゲることはある。あまり大袈裟にとらえないで下さいね。

ところで、この区域のあるビルの屋上に菜園があって、前回来たときにはなんと稲があった。今日見たらハーブが5種類ぐらい植えられていた。いいねえ。ビルの屋上なんかでも小さいながら畑ができるんだ。

それと、僕のこの担当のところには風俗が何軒かあって、ある店にはポストがないので僕が直接店内に入って「おしらせ」を届けているのだが、届け終えて店から出てきたら、ちょうど通り掛かりの3人組の若い男たちと目が合った。

それでちょっと気になったんだけど、彼らは僕と視線を一瞬合わせた後、なんとなく気まずい雰囲気でふっと逸らせた。他にもチラッとこちらに一瞥をくれて足早に行ってしまった人が二人いた。

何か誤解されてるような……。作業着を着て、何やら肩から機械をぶら下げて昼前から風俗に入る奴がいるか? あ、それともイメクラの「検針プレイ(そんなのあるのか?)」と間違われたのかなあ。

水道検針日記(199Y年11月2日)~オシラセ カナラズ トウニュウ

およそ一週間ぶりの仕事だ。しばらく間が空くので、月末は毎回のように8月31日の小学生みたいな気分になる。昨日の夜は憂うつだった。

毎月、月の始まりは「早く月末にならないかなぁ」と願って仕事をして、それでいざ休みに入ると仕事がある週の倍の早さで時間が経つんだな。そんなもんだよな。

偶数月は件数が平均していて、数が多くて苦労する日がないかわり、少なくて楽な日もなく、ダイナミズムに欠けるところがある。それに対して、今月のような奇数月は、前半が件数が多目で、半ばに460件の山場があり、それが過ぎればかなり楽になってのんびりできるが嬉しい。生活のためだ。がんばろう。

実は土曜日に、フットサルというミニサッカーをやって(今回はあまり活躍しなかった。悔しい)、相手側選手と接触して左手親指を突き指してしまった。それで日曜日はずっと湿布を貼って冷やしていた。

検針業務をするにあたっては、右手に検針棒を握り、左手にハンディを握るので、どこか指を怪我をするとまともに仕事に影響が出るので非常にこまる。それで親指というのは何をするにも重要な存在なので、どうなることかと心配だったが、今日になって大よそ腫れは引いた。よかった。

ところで、フットサルコートの借り賃って一時間あたりいくらぐらいだと思いますか? 大体、都内及び近郊だと一時間で7500円くらいはかかるんだって。それで我々は2時間やったので1万5000円払った。

それを3チームで頭割りして1チーム5000円、僕のチームは5人ぎりぎりしかいなかったので一人頭1000円だった。2時間で9分セットを8回くらいやって走り回ったから、かなり元はとった気がしたけど、でももう少し安かったら嬉しい。それにスポーツ振興の意味でもなんとかならないかな。

 

ところで今日の現場はL町とH町。合計430件ぐらい。初日だから再調査がないとはいえ、430件はそんなに楽じゃない。初めにH町を回った。

ここの冊の特徴は、某カルト教団の建物があることと、マンションが多いことだ。マンションなんかの集合住宅が多いと仕事がしやすくて楽なんだけど、反面でオートロックのところもあって、簡単に中に入れない建物は非常に面倒だ。

どういう基準か不明だが、同じ管理会社のマンションでも暗証番号が分かるところもあれば、わからなくて一々近くにいる管理会社に行って入り口を開けてもらわなくてはならないところもある。

ガスや電気の検針は毎月なので、管理会社から暗証番号を教えてもらっているか、もしくは鍵をもらっているところが多いらしい。その点、水道は二ヶ月に一度なので自助努力を求められがちだ。

急に暗証番号が変更されて「新しいのを教えてください」と電話しても殆ど言ってもらえない。なんのかんのとはぐらかされてしまう。「今までは黙認していたんですが、本当はおしえたくないんですよ」だって。「黙認」というのもねえ、誰かんちに遊びに行くわけじゃないんだから。

まぁ、今日そのような近所の管理会社の人に来てもらって中に入ったマンションの一室を検針したら、本来なら「山本豊」とか「飯島洋子」などとあるべき名前の欄に「オシラセ カナラズ トウニュウ」というメモが記入されている部屋があった。

これはかなり異様なことで、今までこんなもの見たことも聞いたこともない。特記事項として「イヌハナシガイ チュウイ」とか「カンリニンニ カナラズ コエカケル」とか「オウタイ テイネイニ」などと注意事項が書き込んである家は少なくないが、名前の欄にそのままその文面があるというのは相当なことだ。

そう言えば、前回そこの部屋の人から「おしらせが入ってなかった」と僕が会社に戻った時点ですでに苦情が来ていた。社員の人がいうには相当に強烈で変わった感じの人だったらしい。ワンルームに住む女性である。

僕がそのマンションを検針して帰社するまでせいぜい4時間もなかったから、彼女は、水道の検針がその日にあるのを知っているか或いは物音から検針日であることを察知して、4時間の間に自分のところに「おしらせ」がないことを知り、電話番号を調べて強烈に強硬な抗議の電話をしたのだ。

水道局だか検針会社だかのこの「おしらせ」への処置は、彼女からの苦情に対する怯えのしるしだろう。しかし、僕は余程ぼーっとしていたのでなければ、その部屋に「おしらせ」を入れていないはすはないんだけどな、変だな。

H町を終えて、大学近くの公園で30分ほど昼休みをとった。

大学がある辺りは住宅街で、周りに喫茶店とか酒場なんか全然なくて学生にとってはちょっぴり寂しいところだ。H町の検針は182件を2時間20分ほどで終わった。一戸建てが多いせいであまり捗(はかど)らない。今日は少し涼しいくらいの気候で検針にはちょうど良い日和だった。

会社に戻って、社員さんにメモリーカードを提出したら「苦情が来てますよ」と言うので何かと思ったら、前記のマンションとは違う建物の部屋からで、「増メモ(通常より4割以上多かった家に何か変化がなかったか連絡を求めるもの)」を入れたことに怒っているらしい。

そこのうちは、昼間は寝ているから、ベルなどならすべからずということになっていて、以前にも一度「増メモ」を入れたことがある。その時は「水量が増えるような覚えがない。どうもおかしい。事情を聞きたいので検針員が午後1時~4時の間にこちらに電話して欲しい」という要望を書いたメモをもらった。

「事情を聞きたい」と言ったって、あんたの家の事情を俺が知るわけないじゃないか、などとブツブツ言いながら電話してみたが、誰もでなかった。二回目も同じ。なんでだろ。それで、激しい怒りの割だったには、それはそれで終わってしまった。

元々、そこの家は多少おかしいところがあって、廊下に面してメーターボックスがあるのだが、そのボックスの真ん前に洗濯物を干す50cmほどの高さの物干しがある。それで、その物干しに札がつけられていて、読んでみると「物干しを動かさないでください。洗濯物にさわられたくありません」とあった。

しかし、どう考えたってその物干しをどかさないとメーターが見れないので、あっさり無視して動かした。それに誰がどこの誰とも知れない人のタオルだのTシャツだのを触って喜ぶというのか。

それで今日の苦情は、どうやら「増メモ」自体に対する反発らしい。「プライバシーの侵害」か。まぁ、それならわかるけど。それで、次回からはその家には一切「増メモ」などの聴取はしないことになった。それもまたよしだ。

水道検針日記(199Y年10月26日)~ミーティング

23日金曜日で今月の検針は最後だったので、今日は再調査とミーティングだけだった。本当は金曜に月の最後の検針したときは土曜に再調査をやってしまって気持ちよく月末休暇に入りたかった。土日が休みでも月曜にノルマが残っていると思うとあまり解放感がないのだ。

でも今月はミーティングがあったので仕方ない。他の仕事の人に比べたら贅沢な悩みではあるし。しかしみんな、とまではいわずとも大半の人は、そこら辺のことをもっと気を使って欲しいと思っているだろう。

ミーティングを欠席した人は4分の1くらいいたと思う。ばっくれたい気持ちはよくわかる。僕もそうしかったのだが、どうも気が弱くてできなかった。以前、アイルランドに行っているときに一回休んでいるし。検針がある日は10時というとちょっと遅い時間なのだが、ミーティングとなると早朝という感じがする。

このミーティングは、去年、大誤検針が二ヶ月に三件起こった後に定期的に催されることになったもので、必ずしも問題があって必要とされて開かれるものではない。今回も特になんと言うこともなく終わった。

要点としては、他の区の営業所で、ある検針員がマンションで5枚「おしらせ」を切らないでつながったまま集合ポストに置いてしまって、それがお客さんから「水道局は利用者のプライバシーの問題を蔑(ないがし)ろにしているのではないか」という苦情が来てけっこう大きな問題になったので注意されたい旨の言葉が所長さんからあった。

なんでもこれはハンディという検針の機械やメモリーカードというデータが入ったディスクを紛失する以上の問題になったらしい。そうか、そうだったのか。僕はいつもハンディやメモリーカードをなくしたら何十万円もの損失だと思って(検針員が弁償するかどうかは別にして。僕もそこらへんはよくわからない)非常に気を使っているものだから、こう言ってはいけないが、お知らせの扱いぐらいでそこまで問題になるとは思わなかった。

水道局としては、内部の問題よりもお客からの苦情に神経を使うのだろう。プライバシーの問題といっても、「おしらせ」はむき出しの裸でポストに入れるので、大抵の家では見ようと思えば簡単に見られてしまう。本気でプライバシーの保護を考えるなら、電話みたいに封書で送るしかないんじゃないか。

その後は、帰社時間4時半までの徹底と当日急に休まれると、社員が検針をしても特に手当てが出ないので歩合制で働く検針員さんにやってもらいたいので、対応が仕切れなくて皆困るというような意見があった。一般の会社みたいに管理が厳しくないので、まぁ割と頻繁に学生がコンビニバイトをさぼるようなことをする人がいるらしい。そこら辺は皆、大人なんだしね、まずいよね。

その後、こちらから一方的に言うだけではナンなので、検針員の皆さん、何か意見がないですか? ということになったのもの、沈黙。東半分と西半分に別れてミーティングしていて、西には元気がいい人がいるものの、東はそうではないので、みんな何も考えてないのか、それとも本当に特に意見がないのか誰も意見を言わないので社員の人は居心地が悪そうだ。それで、ようやく「仕方なく」という感じで博多出身・4年くらいまではゼネコンで働いていたPさんが質問。

その後、僕も一回質問。内容は、使用量が0立方だと、時々、中止するか確認をするよう支持を受けるが、これはお客さんの自己責任の分野ではないのか、検針員がやらなければならないことなのか、ということ。

まぁ、それに対して社員から説明があったが、正直なところ、よくわからなかった。それでミーティングは終了。土曜に再調査してしまっていて帰る人とこれから再調査にでる人に別れて散会。このためにわざわざ月曜の早朝(僕にとっては)に出勤したかと思うとあまり嬉しくない。

その後、たった2件再調査しにE町へ。それが終わって川沿いの緑濃いほとりを自転車で走っていると、同僚の小川幸伸くんが来たので、ベンチに座って少しトーク。小川くんがサンドイッチを食べながら、月末の休みはどうするとか(彼は部屋にこもって何かやるらしい)話した。

その話の中で、前回より4割以上使用水量が増えた場合は「何か変わったことありましたか?」という質問をするのだが、これは完全に「プライバシーの侵害」ではないのか? ということを僕が言って、小川くんが「まあ、そうだね」と同意した。

僕が質問される客の立場だったら、ちゃんと料金を払っているわけだから、増えようが減ろうがこちらの勝手だろうが、と思うだろう。以前、ある同僚が聴取したら、相手はヤクザ関係の人だったらしく「多かったら悪いんかい、少なかったら悪いんかい」とすごまれたそうだ。

そんなことを一々干渉されたくない気持ちはよくわかる。それに「何か変わったことが……」と訊いて「ありません」と一言できっぱり答えられるとこちらとしてはちょっとバツが悪い。

でも、水道局の方としては、聴取することによってお客さんに使用量が増えた原因をちょっと考えてもらって、料金について了解してもらいたいようだ。水なんて割と自分での気づかないうちにどんどん使ってしまうものだから、こんなに使ったはずはないという苦情がくるらしい。いろいろ難しい。プライバシーを重んずる国ではそこらへんどうなんだろう。