水道検針日記(199Y年10月5日)~漏水の恐怖

今日から気温が平年並みまで下がってぐっと冷え込み、本格的に秋が始まったような気がする。急に涼しくなって風でもひいたのか今日はよく鼻水がでて、くしゃみも多かった。出勤に今シーズン初めて長袖シャツを着て行った。これから段々寒くなっていくんだな。また新たに季節の歯車が大きく回ったのだ。

今日は比較的件数が多くて、2冊で合計390。実は土曜日に比較的ハイソな人たちとフットサルというミニサッカーをやって、僕は言うまでもなく活躍したのはいいのだが、終了間際になって左足首をひねってしまい、くるぶしの形がよくわからないくらいに足首が腫れてしまった。ねんざだ。

元々、軽い症状の上に、湿布を買ってずっと冷やしていたので、あまり痛みはないものの、歩くとき軽くびっこをひいてしまう。検針は肉体労働なので体が資本。怪我をして仕事ができなければ収入もない。これがまだ仕事中の怪我なら6割程度の給料は出るが、サッカーで大怪我しても一円も入ってこない。生活のために体を大切にしなければ。

今日は400件近いので、9時半には会社に行くはずだったが、少し遅刻した。昨夜はイタリア・セリアAでサッカーをやっている中田があのインテルと試合をやるというので3時近くまでテレビを観ていたのだ。

僕は、一昨日ちょっと久しぶりにサッカーをやって改めて思ったんだけど、やっぱりサッカーは面白い。観るのもいいが、自分がやると面白さがまた違う。暮らしに必要な活動の他にいろいろと趣味があると生活を豊かにしてくれると思う。僕は音楽を聴くのが好きなので、いつかギターに挑戦したい。

今日の検針はW町から。軽くびっこを引く上に、左足に重心をかけられないため、多少検針のスピードは落ちるが、大した遅れではなかった。現場は半数以上マンションだったので足場が悪いところが殆どなくてラッキー。

今日は特に目立ったことはなかったが、H町のワンルームマンションの管理人が「巡回中」の札を出したまま今日も不在だった。勤務時間でもいない時間の方が多いんじゃないか。彼がいないと中になかなか入れないのでとても困る。マンションの中でも姿を見掛けなかったし、あの管理人は一体どこを巡回しているのか? 駅前でパチンコでもやってるんじゃないのか。

今日は半数以上がマンションの検針で、なんやかやと今日は2時間以上マンションの廊下にいたことになると思う。マンションの廊下というのは、(まぁいろいろなマンションがあるわけだが)基本的に人けが少なくて殺風景で、日当たりが悪く、薄暗いところが多い。

無心で検針をしている途中で、時々ふと我に帰って何となく周りを見回してみると、僕一人しかいない暗い廊下の床に薄暗い蛍光燈が反射して、遠くからクルマが走る音が聞こえる。そういうときに先日ビデオで観たホラー映画のことを思い出したりするとけっこう本気で恐い。マンションってどういうわけか固く自分の部屋を閉ざして、外界と無関係・無関心でいるような気がして好きになれない。

会社に戻って、倉庫代わりにしているアパートが漏水していることを知らせるためにある家に電話した。何しろすごい勢いでメーターが回っていて、すでに金額にしたら15万2880円分にもなっていたのだ。

電話すると女性がでて、それは離婚した夫が借りているところだから、と携帯の番号を教えてもらった。その元夫のところに電話したら、その借り主の男性は、近くにいたのか、すぐにそのアパートに行って自室の水周りから漏れなどがないことを確認し、バルブも閉めた。どうやら地中漏水(地中を通るパイプが腐って水が漏れ出すこと)らしい。

いつもは3000円くらいしかかからない水道代が15万円分も水が無駄に流れたことを聞いて男性は当然のことながらかなり驚いて不安そうだった。地中漏水なんかまめに水道メーターを見ないことには発見できるわけがない。一体、水道メーターをこまめにチェックする人がこの世にどのくらいいるのか。

地中漏水の場合でも水道代はそのままお客さんに請求することがあるらしいんだよね。漏水個所によって自己負担か無料か決まるらしい。その基準は社員さんも知らなかった。水道局だけが知っている。

しかし、漏水で15万も払えって言われたら困るよねぇ。自分では全然使ってなくて不可抗力で無駄に流れただけなのに、そんなこと言われたら誰だって理不尽に思うよ。漏水の修理だって自分持ちなんだから。なんだかんだ言ってみんな渋々払っているのだろうか。僕は漏水を発見した後のことまではよく知りません。

どこかで「こんなの俺の責任じゃないから絶対に払わない」って支払拒否して頑張ってたら結局、水道局の方が折れてタダになったということを噂で聞いたことがあるけど、本当なのかなぁ。

漏水というのは、使用者だけじゃなく、検針員にも大きな問題になることがある。今年、僕がいる管内でメーターボックス内漏水があって、漏水が激しく地中に染み込んだせいでなんと家の土台が傾いてしまい、その弁償だか保証だかを検針員が求められたのだ。

ボックス内漏水を見逃したせいで家がおかしくなったのだ、地中漏水ならともかくメーターボックス内の漏水を見逃したのは検針員の責任だと。その被害者だってせっかく何百万だか何千万だかかけて造った家がそんなことで壊れそうになって必死だったろう(それにしても何てモロい土台だ)。

結局、漏水は前回の検針以後だったらしくてそれは問題にはならなかったが、それ以来僕は漏水がとても恐ろしくなった。全然バカになんかできない。検針員は大工などと同じように会社と個人契約をしているフリーの労働者なので、会社が知らんぷりしたら、過失などは全額でないにしろ、ある程度の個人負担を求められるかもしれない。「ある程度」と言ったって、それじゃ家が壊れたら何百万円も払うことになるのか? ね、恐いでしょう?

ところで、アパートを倉庫代わりにしている男性は「いやー、このアパートにはたまに物を取りにくるだけで、寝泊まりは近所の別れた女房のとこでしているもんですから」と言っていた。うーん、なんだかよくわからない。

奥さんの方は「それは離婚した夫のことですからわかりません」という感じでつっぱねていたから夫の方が居座っているのだろうか。奥さんの方は困っているのかなぁ。まぁ、関係ないんだけど。